*実は当映画祭では当日券売り場を担当していたS東京特派員の映画祭巡礼記。
映画祭5日目が終わった夜にギョーザライスとビールを御馳走いただきました。ありがとうございます!
今回は「アジアフォーカス福岡国際映画祭2009」です。
会場のひとつエルガーラホール
アジアフォーカス福岡国際映画祭に行ってきました。
今回が初めての参加になります。見てきた作品は9本ですが、映画祭自体はメイン作品だけでも20本以上。アジア映画祭としての規模の大きさを実感しました。
それでは見た映画の感想です。
「あなたなしでは生きていけない」(台湾)監督レオン・ダイ 出演 チェン・ウェンビン
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭に続いての鑑賞。
Dシネマ映画祭ではデジタル上映でしたが、アジアフォーカスでは35mmでの上映。フィルムへの変換があまりうまくいってないようで、正直かなり画質が悪い上映でしたが、この荒れた画質もこの映画にはふさわしいかもしれないと思ったりしました。
ゲストとして主演俳優であり、この映画のプロデューサー・脚本家でもあるチェン・ウェンビンが来ていて、チェンさんによればこの映画のタイトルは父親の視点で娘からのものは含まれていないので「おまえなしでは生きていけない」が適当、という話がありました。
「あなた」に父と娘が同じ気持ちであることを表していたと思っていたのでちょっと意外でした。タイトルって難しいですね。
しかしタイトルは別にして、父と娘の愛情を描いた傑作であることはまちいがいありません。ラストシーンではあちこちからすすり泣きが聞こえた感動作。ぜひとも公開してもらいたい作品です。
「ゴーン・ショッピング!」(シンガポール)監督 ウィー・リーリン 出演 キム・ウン エイドリアン・パン
客室乗務員だったクララは台湾人の裕福な男と結婚、仕事をやめ何不自由ない生活を送っていが、実は夫には台湾に家族があり、いわば日陰の存在。
彼女の心を満たしてくれるのはショッピングセンターでの買い物だけだった。
こう書くとなんだか金銭崇拝の都会の生活批判の味気ない映画みたいですが、ショッピングセンターがとてもファンタスティックな空間に描かれていて、かわいい映画でした。
大阪アジアン映画祭と東京のSintokシンガポール映画祭でも上映されました。
「テヘランの孤独」(イラン)監督 サマン・サルール 出演 ベールズ・ジャリリ ハミド・ハビビファル
いとこ同士のふたりの男がテヘランの片隅で違法な仕事をして何とか食いつないでいる。
その出会いと別れを描いています。イランを舞台にしてこんな大都会の孤独といったテーマを扱った映画というのも新鮮だし、無口な大男とおしゃべりな小男の一種のバディ映画なのも珍しく、こんなジャンルの映画もイラン映画に出てきたのかという驚きがありました。
惜しいのはデジタル撮影のスタイリッシュな撮影がこの映画にはあまり合っていないと思える点です。
主人公ふたりのセリフのやりとりなどはかなり面白くなりそうな感じだったのですが…
「黒犬、吠える」(トルコ)監督 メフメット・バハドゥエル、マリナ・ゴルバチ 出演 ジェマル・トクタシュ ヴォルガ・ソルグ
トルコのマフィアの一員として生きる若者が主人公の映画。
とにかく衝撃的なのは生々しいスラムの描写。酒場でのちょっとしたいさかいが命のやり取りになってしまうような日常を臨場感あふれるタッチで描いています。
そしてさらに驚かされるのがラスト。組織から独立してまともになろうとする青年の末路をまったくなんの救いもなく非情に描いて、トルコ映画恐るべし、でした。
「夢の花びら」(スリランカ)監督 プラサンナ・ヴィターナゲー 出演マーリニー・フォンセーカ ニンミ・ハラスガマ
映画界を引退したかつての大女優がかつて、映画界に入るために捨てた自分の娘が生きていたことを知るが、そのとき娘の命はもう残り少なくなっていた。
現代人のモラルや古い因習、HIVや同性愛など、スリランカが抱える今日的な問題を盛り込んでいるのだとは思いますが、そういった要素を外していくと本筋は昔ながらの「母物」であって、古めかしい映画でしたが、そういった古風な作風を味わえるという点では貴重な作品だったように思います。
「ようこそサッジャンブルへ」(インド)監督 シャーム・ベネガル 出演 シュレーヤス・タルパデー アムリター・ラーオ
サッジャンブルという名の村で代書屋を営む青年を狂言回しに、代書を頼みに来る村人たちの様々な問題を描いた映画で、インド映画としては社会派的な内容。
とはいえインド映画なので歌も踊りもちゃんとあります。むしろありすぎというか、なんかこうしたサービス精神と真面目な問題提議な内容がいまいち水と油状態で収まりが悪く、ギャグも不発気味で無難なところに落とし込んだような不完全燃焼さを感じました。
ラストなど、なにかしらの「配慮」があったのではないかと勘ぐってしまうような終り方で、やや残念な映画でした。
「タレンタイム」(マレーシア)監督 ヤスミン・アフマド 出演 マヘシ・ジュガル・キショール パメラ・チョンヤスミン
監督の作品は「細い目」と「ムクシン」しか見てないのですが、父親のDVから逃れる姉妹とその姉に恋する先生というちょっと特殊な設定の「ムクシン」より高校の音楽発表会を舞台にした今作のほうが親しみが持てました。
タレンタイム(音楽の発表会みたいなもの?)で競う7人の才能のある生徒の何人かが主人公で、人種、宗教の違いがそこで描かれます。
この作品のあとにも映画を準備中だったので、これが最後だと監督が思っていたわけがないと思いますが、こうして監督が亡くなった今この映画を見ているとなんとなくこれまでの集大成というように見えてきます。
若者が主人公の学園ものながら彼らのまわりには死の影がつきまとう、でもそれは自然なもの。当然のサイクルのひとつなのだと。そして過去の対立と若者たちの和解に未来への希望も示されるのも監督のメッセージに思えます。
そしてそんな感動的な内容とくだらないおならギャグが同居してるところもこの映画のすごいところ。
この映画は東京国際映画祭でも上映されますので、未見の方はぜひ。
「さよなら、グルサルー」(カザフスタン)監督 アルダク・アミルクロフ 出演 ドフタルベク・キディラリエフ ジャネリ・マカジャノワ
第二次大戦が終わったカザフスタン。党員で歴戦の勇者であるタナバイは荒れた地での馬の飼育を命じられる。
優秀な種馬グルサルーによって馬の飼育も順調にいきかけた矢先、地方長官の乗る馬として目をつけられグルサルーは連れていかれてしまう。
権力者によって運命をもてあそばれてしまった不条理とも言える男と馬の一生の物語。
小説が原作のようで、不必要な描写も残りダイジェストのような印象を与えるのがマイナスですが、シンプルな画面は清々しいし、動物たちと人間の辺境の暮らしぶりはワイルドで魅力的。
あと妻子もあるのにタナバイが惚れる若い娘役の女優が素朴な美人でよかったです。
「イリ」(韓国)監督 チャン・リュル 出演 ユ・ジンソ オム・テウン
「キムチを売る女」がとてもよかったチャン・リュル監督の作品なので、一番楽しみにしていた作品です。
中国の朝鮮族であるチャン監督が初めて韓国で撮った作品なので、ちょっと不安でもありました。
不安というのは、監督が母国ではない場所を舞台にした映画の場合、ステロタイプに陥ってしまうか、観念的なイメージだけの貧困なものになってしまう危険性が大だからです。
正直映画はそうした面がなくはないのですが、観念的であっても見るべきものがあるところが一流の監督である所以でしょう。
また、とてつもなく暗い映画なのに不思議な明るさがあるのも魅力です。
映画は77年に韓国でおこった大爆発事故を題材にしていて、よくこんなことを監督は知っていたなあ、と思ったものですが、韓国の制作会社からの提案だったとか。その後現場に取材に行ったり当事者にインタビューしたりして調べ上げて映画にしたそうです。そして、抑制された演技で通した主人公のユ・ジンソ、オム・テウンも素晴らしかったです。


「イリ」のチャン・リュル監督(左)
「あなたなしでは生きていけない」のプロデューサー兼主演のチェン・ウェンビン(右)
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2009.09.30
| Trackback(0) | 当会の活動報告
「なんであなたたちは映画を観ないの?
ごはんなんて食べなくていいから映画を観なさい」
21日の映画祭打ち上げ三次会の席。
橋本信一監督は自身が映画界に身を置く経緯をほろ酔いの中、話し始めました。
少年時代にフェリーニの「道」を観て感動し、映画への道を志し日本映画学校に入学。
当時は校長が今村昌平監督。
授業は邦画を佐藤忠男先生(!)
そしてなんと洋画が淀川長治先生(!!)
淀川先生の授業はあの語り口、そのままに映画のストーリーを語っていくうちに想いがあふれて感極まりいつしか淀川先生の目から涙が流れたそうで、その姿を見て授業はいつも感激していたと。
ある日、生徒の一人が生活費がままならないのでなかなか映画が観れない旨を淀川先生に話したところ、答えた先生の言葉が冒頭の言葉。
この言葉の後にやはり先生は涙を流したそうです。
人生が映画と共に貫いた淀川先生の言葉として深く納得、と同時に宴席にも拘らず背中がゾクリと戦慄を覚えました。
映画界入りを目指す生徒に淀川先生は諭したのだと思いますが、それくらいの覚悟はあるのかと淀川先生が橋本監督の口を通して今も問いかけて突きつけてるような戦慄を。
「ドキュメンタリーと劇映画も同じ映画であって区別するのは意味がないと思う。
僕も機会があれば劇映画を撮ってみたい」
しばらくは「1000年の山古志」とともに各地を上映でまわるため忙しいと思いますが、橋本監督がどんな“劇映画”を手掛けるのか、実現を期待したいです。
「1000年の山古志」は10月10日より東京・ポレポレ東中野、横浜・シネマ・ジャック&ベティ、川崎・川崎市アートセンターを皮切りに以後、全国各地で公開。
新潟市では10月23日~10月25日に「国際映像メディア専門学校」実習棟3Fにて「掘るまいか」とともに上映。
特に中越大震災から5周年の10月23日には橋本信一監督も駆けつけてトークを行うそうです。
問合せ 上映推進委員会事務局 TEL.025-233-6236(担当/市嶋)
http://1000yamakoshi.main.jp/index.html
当映画祭でも「1000年の山古志」を観たお客様から感動したと多くの感想をいただきました。。
それとともに上映後の橋本信一監督のトークは司会のFMながおかの佐野護さんとの絶妙な掛け合いも相まってこちらも大好評でした。
いづれトークの模様をこのブログに採録できたらと思います。

バーデンバーデンでの打ち上げでの橋本監督。
「1000年の山古志」のポスターの“1000”という文字は“雪”や“米”を視覚化したデザインと説明しているところです。
2009.09.29
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

「私がこのお店を始めた頃は、この周辺にビルが建ち始めた頃なのよ。
それでビルにはだいたい喫茶店が入ってたわね。
だからあんたたちのスズランビルの2階にも確かあった筈。
右隣のビルには『田園』っていう若い人たちで賑わってたお店があって、
左隣には『サファイア』って広いお店があって、
私はそこの主人からコーヒーの煎れ方を習ったのよ」
当会も大変お世話になっている「喫茶 いそしぎ」が今月末30日で閉店します。
以前は年末に閉めると話していたのですが、
「寒くて暗い時に後片付けするのもなんだから」
との理由で今月に決めたそうです。
当会も最近は「長岡インディーズムービーコンペティション」の審査の日は息抜きとしてここでお昼を食べて審査員は身体と頭をほぐしてました。
37年もの間、このお店で長岡駅前の興亡を見つめ続けたいわば貴重な生き証人ともいえる気品溢れる店主の川上さん。
長岡の文化人の一人としても活躍し、”すくらんぶる60”で寄稿頂いた他、昨年開いた当会の「街の記憶 劇場の灯り 長岡座談会」では女学生時代は映画館で1本観てから登校した秘話を語って参加者を驚かせてました。
なんでも最盛期の長岡の映画館は早朝から上映を始めていたそうです。
川上さんがエリザベス・テーラーと同じ生年月日という理由(?)で名付けられた「いそしぎ」。
灯は消えることはともかく残念ですが、お疲れさまでしたとありがとうございました、と心よりお伝えします。

2009.09.27
| Trackback(0) | お知らせ
酒井充子監督と小林茂監督の対談
寺嶋咲さんを小林監督に紹介する五藤監督
「この映画祭は毎回、小林茂監督が参加していることが凄いよ」
9月21日の打ち上げ、すでに3次会の席で橋本信一監督が呟いてました。
小林茂監督は17日の「台湾人生」での酒井充子監督との対談、「そっちやない、こっちや」上映後の講演の他にも客席から「1000年の山古志」や「ブライアンと仲間たち」を観賞。
早川由美子監督にはロビーで長い時間、貴重なアドバイスをしていました。
そして20日は「チョコラ!」の舞台挨拶のため神戸に赴き、とんぼ帰りで21日は長岡駅に着いたらすぐに橋本信一監督、五藤利弘監督の楽屋のもとに挨拶に伺い「1000年の山古志」「モノクロームの少女」の感想を直接伝えていました。
対外的に小林茂監督が参加して下さることがこの映画祭の大きな箔となってることを実感し、内側では精神的に太い支えとなっています。
時に叱咤をいただきますが、これからも小林監督どうぞよろしくお願いいたします。
2009.09.26
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭
入江悠監督(左)と五藤利弘監督
「何か身体を鍛えているんですか?」
「いえ、ただストレスで食べて太っただけですよ」
9月20日。
入江悠監督が「第5回長岡インディーズムービーコンペティション」の監督賞受賞以来、6年ぶりにリリックホールにやってきました。
記憶の中の当時の入江監督はちょっと、繊細な印象だったのでやはり「SRサイタマノラッパー」の成功がそうさせたのか、一回りも大きく感じました。
何しろ映画は日本全国のミニシアターを制覇する勢いで、すでに海外からも公開のオファーがあるとのこと。
しかし饒舌ながらも気さくに接して下さり、一回りも二回りも大きくなっても謙虚な姿勢はとても嬉しかったです。
早くも今度は群馬のラッパーを主人公にした新作のクランクイン直前に来岡。
「SRサイタマノラッパー」上映と共に舞台挨拶を依頼した時に新作の準備をしており、ムリだろうと思っていましたが自作の上映には出来る限り立ち会いたいとして、スケジュールを調整いただき来て下さいました。
舞台挨拶では全国各地でラッパー映画を撮影したいとの話は驚きましたが、上映後ロビーでの即席サイン会では一人一人、お客様の感想を熱心に聞き入っていました。
その中には現在は大学院生として映像を学び、将来は映画界入りを目指す当会メンバーも。
入江監督と話したことがきっといづれ何かしら得をしたことになると思います。
と、このブログを書いてる今ほど当会のお父さんから電話がありました。
「一見するとほらラッパーの映画って軽い感じで作ってるけど、よく観ると傑作だよ。
青春の苦さというか挫折を、心の中を本当によく描いてる。
名作というと過去の映画みたいになるけど、あれは傑作。
青春映画として本当にあれはいい映画だったよ」
と、映画祭を手伝いながら「SRサイタマノラッパー」を観た感想を熱く語っていました。
お父さんからすれば息子ぐらいの世代の話なものの、苦みや挫折などに共感できるものが多々あったことが想像できました。
「SRサイタマノラッパー」は青春時代の苦みと挫折を否応なしに思い出されて、人生のレールから外れる姿はいたたまれなく、ヒリヒリさせてくれますがあのラストシーンの僅かばかりの再生と連帯にほんの少しでも希望を感じた時に入江監督のもくろみは成功したのではないでしょうか。
いい映画を上映できて本当に良かったです。
入江監督、また一回りも二回りも大きくなって長岡にお越しいただけましたらと願います。
そしてサイタマ、グンマと北上して次はニイガタノラッパーを密かに期待しています。
本当にお忙しい中、ありがとうございました!
もちろん今のBGMは「教育 金融 ブランニュー」です!
“金じゃ買えねぇ 利子もつかねぇ 俺の貯金はハートの中さ”

*ロビーに足を運んだ映画人は皆さん、シネ・ウインドの掘り出し物市に足を留めて見入ってましたが、入江監督も映画ファンの顔になってポスターを数枚仕入れていました。
2009.09.25
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

“「これでニューシネマパラダイスがよくわかりました」”
トークを終えた大桃美代子さんを映写室にご案内した時の言葉です。
リリックホールには長岡市立劇場と違って、備え付けの35mm映写機がないため、
映画祭は二台の35mm移動用映写機をリリックの映写室に持ち込み設置。
1巻のリールが終わる度にフィルムチェンジを手動で行うという、
全てが自動化された現在の映写機とは対極に位置する方法を取ってます。
またこの映写機設営や撤去は全て実行委員が汗を流して力仕事で成し遂げています。
狭くて暗い映写室の中で奮闘する映写スタッフをぜひ紹介したいこと、
また大桃さんなら、この奮闘ぶりをご理解し興味を持ってくれるかと思いご案内しました。
熱心に映写スタッフの説明を聞き、また映写機からスクリーンへと映る光を
間近で見つめ、当会のアルフレードとトト少年がタイミングを合わせて緊張のフィルムチェンジが無事にできたことを見届けた後が、冒頭の大桃さんの言葉です。
トークでは復興への思いとともに当映画祭へエールを送っていただいたことはとても感激しました。
舞台裏でも大変気さくで、さらに好奇心旺盛、「モノクロームの少女」が目の不自由な方のために音声アシストを行っていると知ると、すかさず音声アシストの会の皆さんがマイクの前で読み聞かせをしてる姿を見学に行き、ブログに書いていただきました。
http://ameblo.jp/momo-tane/entry-10347490255.html#cbox
ご存じのように韓国映画にハマったことがきっかけで韓国へ語学留学をした体験を持ち、打ち合わせの中で、昨晩映画祭で「映画は映画だ」を上映したことを話すと当然観ていて「あのラスト、お客さん呆気にとられてたでしょう」と笑いながら話していたのは韓流映画の楽しみをとても理解しているとお見受けしました。
こちらは勝手におしとやかなイメージを抱いてましたが、ぐいぐいとチームを引っ張っていく華やいだ姿を少し間近で拝見させていただき、いつしかとても惹かれていくのを感じてました。
本当に魅力的な方で、多方面での活躍も納得でき、大桃さんに当映画祭に参加いただいたのはとても得るものが大きいと思いました。
五藤利弘監督は今度NHK教育テレビの番組の演出を手掛けることになり、司会には「モノクロームの少女」の縁で大桃美代子さんが決定したそうです。
この繋がりが、今後どのような化学反応を起こすのかまた楽しみが出来ました。
2009.09.24
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

9月21日 「震災フェニックス×長岡アジア映画祭」のプログラム「想い出はモノクローム」「モノクロームの少女」上映後のゲストによるトークが好評のうちに終了。
楽屋前のロビーではサプライズとして寺嶋咲さんのためにバースデーケーキを用意し、映画祭実行委員に加えてさっきまで壇上にて寺島さんとお話しいただいた大桃美代子さん、川村亮介さん、五藤監督、今年も男前の司会を引き受けていただいた小林三四郎さん等、その場のみんなで19歳になる寺島さんのお誕生日イブイブをお祝いしました。
特にトークでも引っ張り、盛り上げていただいた大桃美代子さんが先頭に立って音頭を取り一同で「ハッピーバースデー」を合唱。
その後は皆さんでケーキを食べて寺島さんを祝福し、ハッピーな空間となりました。
10月からまた映画の撮影が始まるという忙しいスケジュールをくぐって来ていただいたので、僅かでも映画祭実行委員と交流の場を用意したかったこちら側の想いとしてケーキを用意しましたが、喜んでいただき結実して本当に良かったです。
打ち合わせの席では「モノクロームの少女」から飛び出てきたような“素”のかわいらしさを感じましたが、トークのために衣装とメイクを決めて登場したときはやはり“女優”という職業がとてもふさわしく思いました。
本日、9月23日は寺島咲さんの19回目の誕生日。
改めておめでとうございます!
今後の益々の活躍を期待し、またの再会を一同祈念しています。
たくさんの方々のご協力をいただき映画祭が開催され終了しました。
足を運んでいただきましたお客様はじめご尽力をいただいた方々に深くお礼を申し上げます。
これから少しづつ「第14回長岡アジア映画祭」での出来事をぼちぼちと綴っていこうと思います。

2009.09.23
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭
当会発行のフリーペーパー“すくらんぶる”が映画祭に合わせて発行しています。
今回の特集「だれかとおでかけイベント日和」は当会関係者が毎年参加するお勧めイベントを紹介。
また「第14回長岡アジア映画祭」の特集として「1000年の山古志」の橋本信一監督より作品に込めた思いを書いていただきました。
他に当会活動報告として「ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト」上映会で観た映画の感想を“当会のお母さん”が独自の視点でミック・ジャガーのシャツにこだわって書いたいただいたのは流石と思わせます。
そして「第18回東京スポーツ映画大賞」に参加した事務局長のレポートには是枝裕和監督の後ろ姿も。
好評連載「映画配給宣伝日記」は「台湾人生」の大ヒットで気を吐くあたぼーん女史が入魂の入稿。
編集長の世界旅行記「ジブン探しの旅」はいよいよ残すところあと一回。
SHOPのご紹介は見附のカフェ「cafe ho.cca」を。編集長はカフェめぐりが趣味なんだそうです。
そして新連載として一人の人物に焦点をあてる「私という一滴」が始まりました。
現在、映画祭のお客様に配布しているほか、ながおか市民センターで入手できます。
映画祭ゲストの酒井充子監督、早川由美子監督にもお渡しし、読んでみてとても感心していたようでした。
ぜひ手にとって読んでいただけましたら。

“すくらんぶる”の愛読者“ひなパンダ”に完成したら真っ先に読んでもらい吟味をしてもらいます。
2009.09.19
| Trackback(0) | 当会の活動報告

“台湾人の悔しさと、懐かしさと、本当に解けない数学なんです”
今回も例年と同じく、もしくは例年以上にドキュメンタリー作品を用意しましたが、やはり今の時代の流れを知ることは目にする絶好の機会としてますます偏重していくように思います。
中でも目を見張らせるのは女性監督の進出、そしてカメラを手にし国境を越えていくパワーとしなやかさに触れる機会でもあるかと。
「長江にいきる」のフォン・イェン監督は日本で学び母国で繁栄の犠牲になりながらも抵抗をする逞しい女性を見つめ、「雪の下の炎」の楽真琴監督はニューヨークを拠点にチベット僧の強靭な生命と道を歩みます。「ブライアンと仲間たち」の早川由美子監督はジャーナリズムを学ぶイギリスで出会った反戦活動家を映していき、そして「台湾人生」の酒井充子監督は旅先の台湾で出会った老人が流暢な日本語で話しかけたことをきっかけに“日本語世代”の老人達に取材を始めます。
いづれも何かしら人生を歩む中で出会った人に何ががしの影響を受けて取材を重ねながらカメラを回していきます。
「台湾人生」は5人の台湾の老人達の日本語に耳を傾けて、かの地に日本人が残した大きな影響と複雑な背景を考察します。
何しろ明治28年から昭和20年まで51年もの間、日本の統治下にあった台湾。
よってこの時代は日本語教育が実施されて、教育を受けた人々は当然日本語を話します。
5人の老人達はいづれも日本の統治時代を経て戒厳令という過酷な時代を生き抜いた世代。
彼らが流暢な日本語で振り返る人生に耳を誠実に傾けるのは日本人として礼儀のように思いました。
中でも日本人の恩師への想いを涙ながらに率直に語る老人の姿には熱いものが込み上げる思いが。
上映時間81分というのが非常に短く感じる本年屈指のドキュメンタリー。
撮影は「1000年の山古志」も手がけた松根広隆撮影監督です。
当日は「わたしの季節」の取材スタッフだったという酒井充子監督と懇意な小林茂監督との対談を用意しています。
ぜひお楽しみください。
台湾人生
2009年 日本
監督対談あり
9/17(木) 14:40
DATE
81分
中国語・日本語
英題 “Taiwan Identitiy”
監督:酒井充子 撮影:松根広隆
配給:太秦
(C) 「台湾人生」2009. All Rights Reserved.

1895年から1945年まで日本の統治下にあった台湾では、学校教育は日本語で行われた。この時期に教育を受けた人々は「日本語世代」と呼ばれる。映画は老人となった日本語世代の5人が波乱の人生を語る。
新聞記者出身の監督が7年にも渡る取材活動を経て撮影。日本統治から国民党の独裁と激動の時代を生き抜いた各自が日本への複雑な思いを流暢な日本語で語る姿に忘れてはいけない日本と台湾の歴史が浮かびあがる。
2009.09.14
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

“LOVEとHATEどちらを選ぶかは自分次第
愛の言葉で話そうじゃないか”
今年の映画祭の準備にかかる頃、まだ腹を決めてなかった頃に当会事務所に届いたのが本作。
見知らぬ題名と映画祭での上映を希望する監督からのお手紙、ただしどうやら舞台はイギリス?
ブライアン・ホウというロンドンでは名の知れてるらしい反戦活動家を撮影した本作。
国会議事堂の前にもう8年も座り込みイギリス政府は何が怖いのか、彼を常に監視し法律まで変えて排除をしようとする。
ジャーナリスト志望という女性監督がこのブライアンを知り興味を持ち、ついにはカメラを手に日々の活動を追った本作、彼を支える仲間にまで撮影の輪を拡げ姿を浮き彫りにし、いつしか監督自身も平和運動について思いを巡らしていきます。
監督の視点は適度な距離を保ちながらもどこか不安定さを感じさせますが、一貫しているのは「イラクの、アフガニスタンの子ども達を殺すな!」と戦争に加担する政治家達に、世間に向けてメッセージを放つブライアンの姿。
いわば日本では団塊の世代に属す年だと思いますが、ブレずにユーモアと気骨で挑む姿ははたして日本では可能かどうかと。
その日本でKYばかり気にする空気に嫌気が指して飛び出し、イギリスで反核運動に携わるという若い女性と監督は平和運動に思いを巡らした中で知り合います。
その女性が語った大学での出来事には驚いたりしましたが、彼女と意見を交わすブライアンはとある日本人が“僕のヒーロー”と応えます。その誰かとはぜひ映画を観てください。
先ほどブレないと書きましたがブライアンの表情の中には時折、心のうちで葛藤する表情がかいま見えます。
その内面までは描ききれているとは言えないかもしれませんが、ブライアンの心のうちに思いを巡らすこと、想像し今もブライアンは国会議事堂前に座り込みを続けてると知ることはとても有意義だと。
劇場公開の予定は今のところない、いわば映画祭ならではと貴重な上映で当日は早川由美子監督もお越しくださいます。
映画を観て感じたことをぜひぶつけてほしいと思います。
そして観ていただけたら当映画祭での上映も納得していただける筈です。
本作はすぐれたジャーナリズム活動を奨励するJCJ賞の黒田清新人賞を受賞しました。
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/jcjsho05.htm
ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1
2009年 イギリス=日本
監督トークあり
9/17(木)12:10
DATE
97分
英語・日本語
英題 “Brian & Co. Parliament Square SW1”
監督・撮影・編集:早川由美子
出演:ブライアン・ホウ、バーバラ・タッカー、椎野綾
ロンドンの国会前にテントを張り、8年以上1日も休むことなく反戦活動を続けるブライアン・ホウと支持する仲間。独特のユーモアと勇気で政府や警察に対抗する彼らを約1年半に渡って追い続ける。
「イラクの子供たちを殺すな!」と抗議活動を続けるブライアンとは何者か。今の時代に“反戦”を訴え続けることとは。日本ジャーナリスト会議(JCJ)黒田清・JCJ新人賞受賞したドキュメンタリー。

2009.09.14
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

“タカは人知れずニワトリを殺す”
冒頭の力強い“石引き”のシーンからぐいぐいと引き込まれる1編。
巨石は墓石となるのか、インドネシアのスンバ島を舞台にしながら、いつの時代、いつの場所とも知れない世界で繰り広げられる寓話。
屠畜される猪の生々しい肝臓も、有無を言わせず乱暴される女性も、村の儀式と同じく全て一貫した冷徹な眼差しで見つめ、物語も観る人によって様々な解釈が可能。
物珍しい風習に目を奪われながらも唐突に登場する“日本語”にドキリとさせられました。
そのスタイルは日本のある巨匠に通じるものを感じましたが、監督は「草の上の枕」で知られる俊英ガリン・ヌグロボ。
今年の山形国際ドキュメンタリー映画祭の審査員として来日するようです。
いつの時代とも知れないと書きましたが、この地でも“マドンナ”は微笑み少年たちをドキドキさせてます。
あと画像はモノクロですがカラーの作品です。
天使への手紙
1993年 インドネシア
9/18(金) 12:00
DATE
118分
インドネシア語・スンバ語
原題 “SURAT UNTUK BIDADARI”
英題 “LETTER TO ANGEL”
監督:ガリン・ヌグロホ
出演:ワインデイ/ヌルル・アリフィン
フィルム・写真提供及び協力:国際交流基金
協力:(財)国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
古い習慣が残る村に住んでいる少年ルワ。教師から地球を守る天使の話を聞かされ、天使の存在を信じる。以来、何か問題や悩み事があると天使に手紙を書く。すると天使からルワに返事が来るが村に戦争がおこる。
インドネシアのスンバ島で撮影。ドキュメンタリー・タッチで描かれる村の習慣や儀式など、力強い映像が高く評価されガリン・ヌグロホが世界的名声を確立した作品。
2009.09.14
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭
三沢光晴とマイケル・ジャクソンが亡くなったこの夏の後悔は大地の芸術祭に行けなかったことと、このブログで映画祭で上映します作品、全作を去年のようにご紹介できないことになりそうです。
あとこのブログを読んでらっしゃる方から発売中のキネマ旬報に川本三郎さんの連載で「故郷は緑なりき」がニュープリントで上映される運びになったとメールが届きました。
上映される機会が出来たことは嬉しく思いました。
メールをありがとうございます。
映画祭、ぜひいらして下さい。

現在、挟み込みの真っ最中、はたして間に合うでしょうか。
2009.09.12
| Trackback(0) | 長岡アジア映画祭

今晩のミーティングは映画祭の最終の計画表を立てて、
日付が変わる直前まで行っていました。
ここへきて重大な局面を迎えてヘトヘトになりましたが、
ともかく楽しく映画祭を開催し、お客様やゲストをお迎えしようと話し合って、
笑顔でお開きとなりました。
あと新しい方もご参加いただき、
乱雑した事務所の整理をお願いしましたが、
おかげで随分とキレイになりました。
この方にはミーティングの中で映画祭で重要なことをお願いしました。
そんなわけで映画祭期間中もお手伝いいただける方を随時募集しています。
興味を持たれましたらぜひご連絡、ご参加ください。
またミーティング前に事務局長が撮影した
是枝裕和監督のビデオレターを皆さんで拝見しましたが、
とても真摯にお話をいただき、感激をしました。
「大丈夫であるように」上映前に流しますのでご注目下さい。
是枝監督から書いていただいた映画祭ポスターのサインには、
“ずっと、続けてください”
とメッセージが添えてありました。
2009.09.11
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“福祉の究極は人間が人間の尊厳が実現するということ”
生涯にわたり『福祉』のあり方を問い続けていた柳澤寿男監督の記録映画の傑作。
障害者たちとともにある地域の姿を丹念に見つめていき、様々な葛藤とともに愛知県知多市の療育グループが障害者、指導員、ボランティアとともに共同作業所を建設・完成する姿を追う。
中でも障害者たちが、それぞれ意見を述べ合い作業所の設計図を作成、そして自分たちの手で作り上げていく様は感動的。
周囲の思惑をこえて“生きていく姿”を真正面にさらけ出す姿、そしてそれを支える協力者たちの人間関係に『福祉』の原点を見る思いが。
僭越ながらも、ぜひ『福祉』に従事する方々、志す方々に観てほしいと切に思う1本。
1982年の作品ですが当時と今は何が違うのか、何も変わらないのか、かえって退行しているのか。
柳澤監督の視点は今を鋭く捉えているような気がしてなりません。
そしてこの撮影現場から映画の世界へと足を踏み入れたのが長岡在住の小林茂監督。
当日は“小林茂の第一歩”として恩師である柳澤監督も絡めて自身の原点を語っていただく予定です。
完成した素晴らしい作業所“ポパイの家”は今現在どうなっているのか、観終えたら大変気になる筈、小林監督は現在の姿をお話しいただくでしょうか。
そっちやない、こっちや 「コミニティ・ケアの道」
1982年 日本
9/17(木) 19:00
DATE
113分
日本語
英題 “Not This Way But That”
監督:柳澤寿男
提供:もう一度福祉を考え直す会
愛知県知多市の療育グループの記録。全員が力をあわせ共同作業所「ポパイの家」を建設するプロセスを通して、障がい者にとってのコミュニティ・ケア=地域福祉とは何かを考える。小林茂監督がドキュメンタリー映画の助手として初めて現場に入った作品。「ちえおくれに何がわかる、何が出来る」ときめてかかって、私たちの倫理、思惑、感情で事をすすめてきたのではなかったか――と柳澤監督は問いを投げかける。
上映後、小林茂監督講演 「小林茂の第一歩」
2009.09.09
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昨晩の上映企画室はついに映画祭を1週間前に控え、実行委員が集まって作業に集中していました。
とはいえ息抜きとして、新しく参加したメンバーについていろいろと質問をしていました。
この新メンバーは台湾出身でカナダの国籍を持ち東京に留学し、お仕事で最近長岡に来たという国際派。
誰かに似ていると思ったら「初恋の想い出」のヒロイン、ヴィッキー・チャオに。
皆さん関心を持ってお話しをしながら作業をし、映画祭の予告編を見せましたらやはり「台湾人生」に強い興味を抱いたようです。
できたらお越しいただく酒井充子監督をご紹介したい思っています。
ちなみに阿部寛さんの大ファンで特に「結婚しない男」が良かったと。
「チョコレート・ファイター」の阿部さんも気に入っていただけると思います。
というわけで当日のお手伝いいただける方も常時募集しています。
興味を持たれましたらぜひご連絡ください。
その後は開会式に歌っていただくロマンダムールさんがお仕事帰りにお越しいただきました。
本屋さんの店長でもあり、多忙の中、当日の打ち合わせを済ますとお互いに近況や身辺について1時間ほど雑談をしていました。
考えればロマンダムールさんとも長いおつきあいになりますが、二人きりでこんなに話すことはあんまりないなぁと、お互いに思っていました。
そんなわけでまだまだ話足りませんでしたが、時間が来たのでお開きに。
次はいつお話しできるかわかりませんが、ロマンダムールさん、今年もよろしくお願いいたします。
あと昨日の新潟日報芸能欄に紹介されて、また明日の長岡新聞にも当映画祭が掲載される予定です。
そしてケーブルテレビのエヌ、シィ、ティの番組内でも紹介をいただいてます。
ご協力をいただいてるマスコミの皆様、この場を借りて御礼を申し上げます。

*「あいち国際女性映画祭」の酒井充子監督。
「台湾人生」は東京で観賞したS東京特派員は「長岡の皆さんによろしくお伝えください」とメッセージをいただいたそうです。
2009.09.08
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恒例のS東京特派員の映画祭巡礼記。
今回は『あいち国際女性映画祭』です。

名古屋で開催されたあいち国際女性映画祭に5日、6日といってきました。
今年14回目になる、女性をテーマにした映画と女性監督作品を集めた映画祭です。
このなかでアジア映画に関連した4本の映画を見てきました。以下はその感想です。
「赤い点」(ドイツ・日本)
監督 宮本麻里枝 出演 猪俣ユキドイツの映画学校で学んだ監督の卒業制作として作られた作品。ドイツ国内でひき逃げ事故で死んだ日本人家族の実話に基づき、ドイツを訪ねた遺族がもし引き逃げ犯と出会ったらという仮定で作ったストーリーです。
幼いときに家族を亡くし、おば夫妻に育てられたヒロインが偶然見つけた家族の遺品。その中に赤い点がつけられたドイツの地図があった。その意味を探しドイツへ一人旅立つます。
ほとんどがドイツ国内のシーンですが、冒頭20分ほどが日本の場面。主人公のおば夫婦に音無美紀子、大和田伸也が扮してますが、写真屋の主人として峰岸徹もワンシーン出演しています(撮影は2年前とのこと)。
監督はフィルムでの撮影にこだわったということで、異郷で失った家族を追想する主人公を描いた16ミリシネマスコープの荒れた画面からはある種幻想的な美しさが感じられました。
「今、このままがいい」(韓国)
監督 プ・ジヨン 出演 コン・ヒョジン シン・ミナ故郷の済州島でシングルマザーとして魚市場で働く姉とソウルで一流企業に勤めシングル生活を送る妹。
性格も生活レベルも異なる姉妹が、母親の死をきっかけに家を捨てた父親を探す旅に出る。脚本も手がけたプ・ジヨンはこれが第一作目。緻密な構成の脚本といい、これが初監督作品とは思えない完成度をもった作品です。
当初予定していた俳優が出演できなくなったところシナリオを読んだシン・ミナが名乗りをあげ、そこから姉役のコン・ヒョジンも決まっていったとのこと。
また低予算作品のため、シン・ミナもコン・ヒョジンも自分たちの出演料を作品に投資する形にしてくれたため、制作費がだいぶ助かったとのことです。
それほど作品に入れ込んだシン・ミナらしく、今までのイメージにないシリアス演技を見せて驚きました。「ミスにんじん」の怪演から一転、受けのコン・ヒョジンの演技も見所です。
「チベットの音調」(中国)
監督 ダイ・ウェイ 出演 カン・セジョン ツンチェン・デンジュ北京で活動していた歌手のアン・イーはチベットの「ガンラメイド」という曲を歌ったところ突然声が出なくなってしまう。と同時に「ガンラメイド」を歌った伝説の歌手ラムがチベットの神湖にたたずむ夢を見るようになる。ラムに会えばまた歌が歌えるかもしれないと夢のお告げに導かれるように北京の仲間になにも言わずに彼女はいなくなってしまう。チベットに現れた彼女に心引かれる青年。彼の祖父こそ伝説の歌手ラムの恋人であった。結ばれずに終わった60年前の恋に導かれるように出会った二人の運命を変えるラブストーリー。
主役の健康問題で中断、新たに韓国の新人女優を起用して完成させた映画で、トラブルが作品の完成度にカゲを落としているような気がしますが、そういう傷だらけになり、矛盾を抱えながらも中心になるラブストーリーに関してはブレてないせいか、見終わった感じはそう悪くはありませんでした。
「飛べ、ペンギン」(韓国)
監督イム・スルレ 出演 ムン・ソリ韓国の人権委員会は人権問題の啓蒙のために今までいくつものオムニバス映画を作ってきました。わたしは「もしあなたなら」と「五つの視線」と2本見たことがありますが、パク・チャヌクやチャン・ジン、パク・クァンスなど名だたる有名監督が腕をふるって教育的ながら見ごたえのある作品になっていました。
ただ、なかにはやや独りよがりで意図がわかりづらい作品もあり、人権委員会としてはいままでの経験をもとに、今回ははじめての試みとしてひとりの監督による長編として製作したとのことです。監督のイム・スルレは前にもこのシリーズで監督を経験して、関心もあったのでしょう、「わが生涯最高の瞬間」の大ヒットの後でオファーが殺到している中で低予算のこの映画を受けてくれたそうです。
長編ながらエピソードがゆるやかに繋がった実質オムニバスで、エピソード1の教育ママの犠牲になる子供の問題、エピソード2ではそのママの職場を舞台に男らしさ、女らしさ、団体行動を強要する職場問題を描き、エピソード3では職場の上司の家庭で、留学する子供とそれにつきっきりの妻のために犠牲になる夫を、エピソード4では上司の親・・主人公に熟年離婚の問題と、ふつうの生活の中で見過ごされがちな問題を取り上げ、よりよい関係へと導く手助けになるようなまさに啓蒙的な映画で、韓国では実際に教育現場で教材として使われているとか。
韓国も不況で政府の援助も縮小されて厳しい状況らしいですが韓国の映画人の社会貢献に対する意識はかなり高いようです。
タイトルのペンギンは外国に子供を留学させる親を例えた話の中に出てきます。鷲は何度も子供との間を往復する(金持ち、)そうでない渡り鳥なら年2回、雀は近場で済ませる(留学させられない)、飛べないペンギンは…まあ、この映画に出てくる人たちがどこかペンギンな部分を持っていて、それは見ているわたしたちのことでもあるのでしょう。
あいち国際女性映画祭のアジア関連の映画はだいたい見れたのですが、まず驚いたのはメイン会場、地方会場(この映画祭は名古屋近辺の市でも上映があるのです)ともに女性の観客が大部分だったことです。男性映画ファンはなにか偏見があるのではないでしょうか。
私が見た作品だけをとってみても男性が見ても面白い一級の作品がそろってますし、「飛べ、ペンギン」のように男性にも見てほしいという作品もあります。ぜひ、映画ファンなら地元で開催されるこの映画祭に行ってほしいと思いました。

*交流パーティ。ゲストの記念撮影の様子。
長岡にもお越しくださる酒井充子監督と早川由美子監督の姿も。
2009.09.07
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「主人公は寺島咲さんを考えています」
まだ「モノクロームの少女」に着手する前、五藤利弘監督から聞かされた言葉に耳を疑いました。
当会にもご縁のある大林宣彦監督の傑作「理由」で鮮烈な印象を放った少女役がとても記憶に残ったので。
と同時に当時はホントに撮影できるのか定かでない五藤監督の映画つくりが“寺島咲”という大きな名でますます実現できるのかと内心思ったりしました。
そしてぜひ実現してほしいと。
それほど寺島咲さんはキラ星の如く光る日本映画の若手女優の中で稀有な存在だと思っていました。
何しろ寺島さんの涙で始まり、涙で幕を閉じる「理由」の好演で女優を見るセンスが随一といっていい大林監督から気に入られ,以後、「転校生-さよならあなた-」「その日のまえに」と連続出演。
森田直幸クンの尾道の恋人役の「転校生」では終盤登場し利発な姿で見せ場をさらいましたが、とんでもないメイクで登場したギャル役「その日のまえに」ではホントに僅かな出番ながらも、携帯で恋人との別れ話が進む悲しみの心情が伝わったのはとても感心しました。
失恋、貧乏、家庭不和の三重苦の末にカリスマ塾教師と出会い東大を目指すという破天荒な物語「受験のシンデレラ」は寺島さんの並外れた演技力で地に足をついた物語になり、リメイク版の「櫻の園」では真面目な優等生という印象から寺島さんが逸脱を試みて物語が弾みます。
「咲ちゃんは自分だけでなく出演者全員の台詞を覚えているんですよ」
栃尾の「モノクロームの少女」先行上映会の記者会見での母親役の大桃美代子さんの発言でしたが深く納得。おそらくどんな小さな役でも役柄を掘り下げていき、深く同化していく研究熱心な点、清楚なルックスと確かな演技力を持つ女優として今後ますます期待させてくれます。
汚れない里・栃尾の無垢な風景に溶け込み、長い黒髪をなびかせ先人の恋の行方を追ううちに自身にとって大切なものを確認し成長していく姿。
ラストシーンの“くるみ”の表情に気付かされるのは「モノクロームの少女」は寺島咲さんの代表作の誕生に立ち会えたことでした。
そんな寺島咲さんが映画祭にお越しいただくことに、今からドキドキドキ…
http://www.promage.co.jp/saki.htm
寺島咲 1990年 東京都生まれ
代表作 映画 『理由』大林宣彦監督、『青いうた のど自慢 青春篇』金田敬監督、『受験のシンデレラ 』和田秀樹監督、『櫻の園』中原俊監督など。
第14回長岡アジア映画祭 震災フェニックス×長岡アジア映画祭
9月21日(月祝)14:10~
「モノクロームの少女」上映後 五藤利弘監督、寺島咲、大桃美代子トーク
2009.09.06
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