甜蜜蜜
「第3回長岡アジア映画祭」で上映したレオン・ライ主演作がメロドラマの金字塔「ラヴソング」。
監督はラブコメの金字塔「君さえいれば/金枝玉葉」のピーター・チャン。
「君さえいれば」は当時上り調子のアニタ・ユンの起用とレスリー・チャンの大人の魅力の相乗効果が吉となり、当時の香港映画のノリと勢いのままで、キャストもスタッフもワイワイ楽しんで撮ったら傑作になったという素晴らしい映画でしたが、「ラヴソング」の方は目前に迫った97年の香港返還を前にピーター・チャンが腰を据えて、香港という“借り物の時間、借り物の場所”を真摯に見つめた傑作です。
大陸から一旗あげるために香港にやってきた男と女の10年の物語。
二人を繋ぐのは互いにテレサ・テンの大ファンということ。
レオン・ライは弱気で優柔不断、いつもマギー・チャン(こちらも絶品!!)の後をくっついてるような頼りなさですが、失敗をしたマギーが落ち込んだ時に無防備な優しさで励まし、孤独な二人は互いに惹かれあっていきます。
しかし大陸からレオンの婚約者がやってきてと、、、
二人はすれ違い、やがて別れて運命の再会をテレサ・テンとともにニューヨークの地で果たすのですが。
エリック・ツァン扮するヤクザの情夫とミッキー・マウス、演技でなく地だと思う不良外人に名カメラマンのクリストファー・ドイルと助演陣も印象深く、香港を舞台にした名作「慕情」とウィリアム・ホールデンへのノスタルジーも味わい深いです。
まるで国境線を越えて流れていく中国人の象徴のようなテレサ・テンの歌声。
それとともに運命に流されて縁を信じ心に秘めて悪戦苦闘する男と女。
10年愛を観てきた者の心を蕩かすのはラストシーンのレオン・ライの笑顔。
この笑顔でレオンは間違いなく役者として映画史に足跡を刻んだ事と思います。
そしてエンドクレジットではレオンが囁くように歌い深い余韻を残す「甜蜜蜜」。
97年の東京国際映画祭で上映された際は日本のファンクラブの人達が客席で合唱して舞台挨拶に立つレオンを迎えていました。
「第3回」の映画祭のチラシにはレオンから届いたメッセージが掲載されてます。
“祝 永遠向前”
寄せて下さったことをレオンは覚えているかはわかりませんが、この言葉通り今もこれからもレオンは前を向いてることと思います。
「ラヴソング」は香港映画が大陸に回収される前に放った傑作として名を残してます。
機会がありましたらぜひ!