戦争は麻薬だ
「ハート・ロッカー」ではあえて無名俳優を主役クラスに抜擢。
そのためいわゆるスターへの思い入れがないぶん、誰がいつ爆死するのかという凄まじい緊張感が全編を支配しています。
なかでも命知らずのジェームス二等軍曹を演じるジェレミー・レナーの存在感は目を見張ります。
安全対策も行わず、爆弾処理に従事。
周りから見れば狂気の沙汰にしか見えないものの、本人は過剰すぎる自信とともに爆弾の前に歩んでいきます。
冒頭の「戦争は麻薬だ」という言葉を体現するように戦場ではその緊張感がたまらないといったあんばいで生き生きと終始、痺れながらも家庭では買い物先の無機質なスーパーの中で茫然と立ちすくむ、と死と隣り合わせの戦場と幸福に包まれた家庭とのギャップを見事に演じてます。
彼のラストシーンの姿にこの映画の本質、アメリカの危うさをあぶりだしてるように思いました。
以前に「S.W.A.T」に出てたとはいえまるで思い出せませんが、この1作で今後の活躍が約束されたのではないでしょうか。
一方、主役の引き立て役に徹した超大物がレイフ・ファインズ。
「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」「愛を読むひと」、最近は「ハリー・ポッター」にも出演していますが、貴公子然としたイギリスの本物の実力派俳優。
キャスリン・ビグロー監督とは「ストレンジ・デイズ」との縁での登場かと思いますが、得体のしれない賞金稼ぎとしてさすがのオーラで釘づけにさせてくれます。
とはいえそのオーラはこの映画に長くは必要ないとばかりに短い出番なのでちょっと驚きました。